はじめに
はじめまして、ボドゲイムひろです!Twitterで交流して頂いている方は、いつもありがとうございます。イベント担当・広報として所属しているボドゲイムのHPやTwitterをボードゲーム活動のメインログとしてきましたが、このたびサークルではなく個人的に長文でまとめて公開したい記事がでてきたので、新しくボードゲーム用の個人ブログ(仮:ひろのボードゲームあれこれ、ひろボド?笑)を作成しました。気が向いた時に書くスタイルかとは思いますが、普段Twitterなどでは書けない長めのレビューや、海外情報、オピニオンが書けたらなぁと思ってます。どうぞよろしくお願いします。
さて、先日ボードゲーム「Spirit Island」の翻訳プロジェクトが完了しました。1記事目は、こちらの翻訳プロジェクトについてです。
スピリットアイランドって?
今回和訳をした、ゲーム「Spirit Island(スピリットアイランド)」は、米国キックスターターから始まり、現在はGreater Than Gamesから販売。BGGでも評価の高い人気の協力ゲームです。しかしながら、日本語版・和訳はまだ公開されておらず、日本ではまだまだ普及していないゲームと言えます。
Spirit Island | Board Game | BoardGameGeek
翻訳プロジェクトのはじまり
ある日このゲームが気になり購入したは良いんですが、マニュアル・カード・ボードの膨大な量の和訳に辟易していたところ「DTPならお手伝いできますよ」とU壱さんに声をかけて頂いたのが始まりです。その後、複数で進めたことがないのでプロジェクト化する自信がなく、ど〜しよっかな〜と思いつつ、本ゲーム製作者にコンタクトをとるなど個人で進めていました。その後、テキストで和訳作成中のとろんさんを発見&声をかけさせて頂き、ならば是非3人で合同で実施しましょうということで、本翻訳プロジェクトはスタートしました。
記事公開に至った理由
翻訳プロジェクトを複数人で進行したのが初めてだったため、気づきの多いプロジェクトでした。製作者やプレイヤーの方々にとっても、なかなか趣味でプロジェクトを進める機会はないと思います。さらに、翻訳の詳細なツール、ことボードゲームに特化した具体的な翻訳関連記事もそんなに見当たりませんでした。
そこで、このプロジェクトの知見を少しでも多くの方に知って頂きたく、翻訳初心者ながら筆をとりました。何かしら、みなさまに得られるものがあると嬉しいです。
以下、プロジェクト概要と詳細、そこから得たノウハウになります。
翻訳プロジェクト概要
◆メンバー
A:U壱(@u1bdg)さん
B:とろん(@cocottejs)さん
C:ボドゲイムhiro(@bodogeimu)
◆期間
約3週間(2018/02〜2018/03)
◆役割
A:DTP全般(画像データ作成・翻訳流し込み・印刷用データ作成)
B:翻訳全般(テキスト抽出・翻訳メイン)
C:事務(製作者に公開許可申請等)・フレーバー翻訳補佐・校正
※全員、本ゲームを保有
◆翻訳が必要な対象物
・マニュアル(32ページ)
・各種パワーカード(212種)
・シナリオカード(4枚×表裏)
・精霊ボード(8枚×表裏)
・侵略者ボード(1枚)
※このゲーム、パワーカードの能力がそれぞれ全て異なり、文章内にアイコンも入っています。
進め方
プロジェクトの進め方は以下です。
- TwitterでグループDM作成、微量の修正であればここで報告
- 各自ローカルファイルで作業を進める
- Google Driveでファイル共有
- txt/PDF等ファイルを更新し、グループDMで報告
- 更新内容詳細は「更新履歴」で一元管理
- 和訳はテキスト状態で別の人がダブルチェック、その後DTP流し込み
- 印刷して実際に遊んで確認→誤字発見次第、元データと修正差分ファイルを更新
- グループDMは会話が流れるため、修正フェーズ以降は「修正依頼」フォルダでテキスト管理
ツール
それぞれの工程で使用したツールは以下です。こちらが一番参考になるのではないかと。
・データスキャン
(ボードは家庭用プリンタで取り込めないサイズのため)
・文字認識OCR
メンバーB→使用せず、目視で手打ち
メンバーC→Googleドキュメントで画像からデータ解析
・文章校正
Ct converter(Windowsのみ、Iwib.jp/ct-converter/ )
プログラムソース簡単変換(Filter.webings.net ブラウザ上で改行を置換することができる)
・翻訳
・テキストエディタ
メンバーB→Sublime Text 3
メンバーC→CotEditor
・厨二病用語探し
Weblio類語辞典(https://thesaurus.weblio.jp/)
・DTP
・印刷データ作成
Print Album(Windowsソフト。カードなど複数枚の配置が容易)
・データ共有
Google Driveでファイル共有
→更新履歴を記載して、各自追記、バージョン管理も1ファイルで行う
図:更新履歴の一例。
本プロジェクトの特殊な点
他翻訳プロジェクトになさそうな、特殊な点は以下。
・公開されているマニュアル原文PDFが画像
・手札になりえるカードには「ふりがなをふる」こと
・難解な(またの名を中二病)単語が多用されているところ
他プロジェクトに応用できそうなノウハウ
この翻訳プロジェクトを通して新たに学んだノウハウです。
・【和訳】修正方針や統一する語句一覧を早いうちに作成
・【和訳】ボードはシールを貼らず英語表記のまま使われることを想定し、マニュアル表記にも英字をカッコで併記(例:恐怖カード山札(FEAR DECK) )
・【印刷】修正が入った差分ファイルのみの印刷ファイルを作成
・【DTP】Photoshopのスポット修正ブラシツールで文字を消し込む
・【和訳アイテム作成】薄いアクリル板+印刷した和訳シール+ガラス保護の透明なシールで1からボードを自作、元ボードは全く手をつけず新たなアイテムとして使用する
Google Driveフォルダ構成
「Spirit Island翻訳プロジェクト」以下に「基本」フォルダを切り、イラストやテキストをフォルダ化。少しわかりにくかったので、拡張プロジェクトで構成を改良しました。
メンバー感想
お二方に感想をいただきました。
U壱さん
いつもの自分のテキトー訳でなく、しっかりした内容のコピペ・カードシール製作を楽しくやらせてもらいました
1人ではどうしてもチェック漏れなどあるので、3人でやれてとてもスムーズに完了できたと思います
このプロジェクトが終わり、また1人でやってくと思うと、ツライなって思いましたw
とろんさん
実は私はプロジェクトの開始前に自分で遊ぶためだけに翻訳作業を進めていました。思いのほかマニュアルのページ数、カード枚数などが多かったんですが、買ってしまったものはしょうがないと思い作業を開始したのが12月下旬あたり。
マニュアルの基本的なプレイができるページのみ翻訳完了した状態でツイートしたところ、ボドゲイムさんとU壱さんから一緒にプロジェクトでやりましょうと声をかけてもらったところです。これは本当に嬉しかった。ひとりで黙々と作業しているのは結構キツいときもありましたので。
プロジェクトが開始してからは翻訳の貯金があったので、担当が割り振られていたとはいえ土日はがっつり遊べるペースでできたのも良かったです。ただ、それほど注目のあるゲームとは思っていなかったので(私が翻訳開始したときはBGGランクもそれほど上ではなかったと思います。Top500に入ってたかな?入ってないかも。)マニュアルがPDF化されるなど考えていませんでした。そのためかなりの表記揺れがあり、ゴタゴタしてしまった印象があるのが今回もっとも大きな反省点ですね。
いつもなら画像処理も結構面倒だなと思い、マニュアルは自分がインストできればいいやとテキストのみ、カードも簡単なシールで済まそうかと思ってました。しかしU壱さんのおかげで、マニュアルがきちんとPDFの形になり、カードも綺麗に和訳シール化されました。マニュアルの中でも最も困難な和訳のフレーバー部分を放置していたんですが、それをボドゲイムさんが担当していただけて、画竜点睛を欠く状態にならずに済んだことも気持ちのいいプロジェクトになり大満足。
つくづく「役割分担って大事だな」と実感。ひとりで作業していたらおそらくあと1〜2ヶ月はプレイできなかったと思います。ほかの方からも”Spirit Islandをプレイできたよ!”って声を聞けるのが楽しみです。
私の感想
私、ほぼ何もしていないんですよね(笑) 今回お二方に翻訳/DTPをそれぞれメインで進めていただきました。また進行にも至らぬ点が多々あり、今後改善できたらと思っています。(→反省を生かして「Spirit Island拡張」の翻訳プロジェクト絶賛進行中!)
「翻訳」は独特の側面があり、たくさん学ぶことがありました。プロジェクト実施前後のギャップという面で一番学んだことは「英語力」よりも「日本語力」「(語句統一などの)整合性の検知能力」が重要ということ。もちろんGoogle翻訳の文を修正していく際、不明な箇所は元の英語を読む必要があるのですが、その結果、文章に意味が通らないと結局ルールを把握できないのです。また、語句の統一も、だいたい意味が通っていたら読めちゃうのですが、そこの小さな違和感に気づかないといけません。これは、普段あいまいな言語で成り立つ会話のコミュニケーションとは大きく違います。
おそらく今回のプロジェクトで一番成長したのは私で、お二方が普段使われてるツールを教えて頂いたり、リアルタイムの動画共有で、画像処理のツール例も教えて頂けたりしました(この辺も記事にすべきか?)。
普段のボードゲーム制作チームは、面識のあるメンバー(しかも全員同じ大学)とのやりとりなのですが、今回ご面識がなかったにも関わらず、このような形でチームとして進め、たくさんの学びを得ることができました。
最後に
突然始まった本プロジェクト、新しく何かを始めたもんがち、やりたいと自己表明したもんがち。海を越えて人をつなげ、さらなる新しい価値を生み出すボードゲーム。そう感じさせてもらったプロジェクトでした。楽しかったので、終わってしまうのが悲しい。
本和訳をtwitterで公開した時の反応、実際のデータは以下ツイートのリンクをご覧ください。DL時はコメントよろしくです。
Spirit Island
— U壱 (@u1bdg) 2018年3月9日
和訳ルール
各カードシール
各ボード和訳
完成しました
3名での共同翻訳です@bodogeimu @cocottejs
自分はカードシールなどのお手伝いをさせてもらいました
是非、お使いください♪
できましたら、DLの際にコメント頂けると嬉しいです<(_ _)>https://t.co/m98CSZAKgB pic.twitter.com/r5QlMi1v2f
最後に、U壱さん、とろんさんのお二方に、多大なる感謝の意を込めて。本当にありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします!
海外のボードゲーム情報・ゲムマなどの出展情報はTwitterメインでつぶやいています。
これからも、面白いことがあれば書く予定です。
以上、長くなりましたが、初ボードゲーム記事でした!