Hiroのボードゲームあれこれ

アメリカをはじめとした海外のボードゲーム紹介・ショップ訪問記、ゲーム製作記をつづります。

「蒸気の時代」DX新版セット2・3の13マップ紹介

🚂 Age of Steam Deluxe: Expansion Volumes I, II & III のプロジェクト画像

キックスターターで「蒸気の時代DX版」新版の拡張マップが公開されました!

 

せっかくなので、新しく公開された「セット2」「セット3」の13マップについて、ルール概要・感想をまとめました。

 

13マップのうち、プレイ済みマップに関しては、ルール概要に加え、感想を述べました。DX版になる前の旧版マップで遊んでいることをご承知おきください。残りの3マップの完全新作と未プレイマップに関しては、ルール概要と、ルールを読んだ感想を述べています。

 

2023/04追記:全てのマップを遊んだので、感想を追加しました!

 

それでは早速紹介に移ります!

 

 

 

セット2

イタリア

特徴:

町なし、都市化なし。線路敷設、収入時、緊急株式を1株につき3ドルで発行可能。完成した線路1リンク分のみ敷設可能。黒都市はないが、黒キューブを移動可能、通過した線路の持ち主の収入を通過リンク数分下げる。

 

特別アクション:

商品の交換(都市化の代わり):袋からキューブを1個ランダムに取り、マップ上もしくは商品チャートの黒キューブ1個と交換する。これを2度行う。

 

感想:

南北に長いマップ。線路敷設に上限はないが、1ラウンド中に完成線路を1リンク分までしか作れない。黒を人のリンクで運ぶとリンク数分相手の収入を下げられる攻撃的なルールの存在により、事前に計算していた収入が一気になくなる恐怖のマップ。借金と線路点のバランスが大きく変わり、アクション強弱がラウンドにより変動する。ツイストが多めだが、イタリアマップ脳になるとかなり面白い。

 

シアトルメトロ

特徴:

商品輸送の回数は初期は通常通り2回だが、商品輸送アクションポイントを増やすことにより輸送回数が増加する。

 

特別アクション:

生産(変更):商品輸送アクションポイントを1増加。

都市化(変更):3エリアのみ都市化可能。3つがすでに都市化されていた場合、商品補充フェーズでダイスの振りなおしが可能なアクションに変更となる。

 

感想:

完全新作。1-3人用のマップで、ソロでも遊べ少人数でも遊べるという点で他のマップと差をつけており素晴らしい。ソロモードは得点計算方法が異なるので、人数ごとに別の楽しみ方ができそう。ターン順の部分をカットし、その分、商品キューブの動きを複雑にしている感じだ。

 

スコットランド

特徴:

ほぼ通常ルール。フェリールートを6ドルで敷設可能。ターン順で2番手のプレイヤーは半額支払い。   

 

感想:

イギリスの最北端に位置する国スコットランドが舞台のマップ。狭いマップだが、敷設不可能な海のエリアがそこそこあるため、2人でも線路の取り合いが熾烈となる。狭いマップではルート設計のタイトさが必要となることに注意しよう。初版のデザインに寄せたイラストも少し古めかしいなと遊んだ当時は感じたが、さまざまなマップを遊んだ後に再度眺めてみると、この色使いのマップも味わい深い。何より旧版のタイルがよく合う。余談だが、筆者が初めて遊んだ拡張はこのマップで、このルールのタイトさに痺れ、のちに200マップ遊ぶ事になった。

 

グレートブリテン

特徴:

町ディスクは8個のみ使用。England、Scotland、Wale間のいずれかの国境を跨いで商品を輸送した場合、収入が最大+1される。

感想:

マップ特性としては、縦には長いが幅が狭い部分が多い。町が中心に集まっているため序盤に高リンクが作りやすくなっている珍しい傾斜が掛かっている。しかし、構築リンク数に自分の機関車レベルが追いつかず、7、8リンクからいかに自分の今の機関車レベルにあった最大輸送リンクを見つけるか、という、いつもと異なる考え方をする、良いツイストである。

 

 

テキサスオクラホマニューメキシコ

特徴:

セットアップ時に、牛トークンを32頭を順に配置。これらの牛は要求都市へのみ商品同様に運ばれる。いかなる商品も要求都市は通過できず、牛のみ輸送可能。新都市タイルなし、都市化アクションなし。   

 

特別アクション:

牛追い:商品輸送フェイズに、牛1頭を1または2ヘクス、線路ヘクスまたは都市に移動可能。

放牧:(即時) 牛小屋から最大2頭の牛をオープンヘクスに直接配置可能。

 

感想:

アメリカ南部に位置する、テキサス・オクラホマニューメキシコの3州が合体したマップ。別途牛のトークンがあり、放牧したり追い込んだりして牛小屋に戻すトリッキーなルールである。このルールは複雑に見えるが、蓋を開けてみると、牛は無色のためどの都市にも止まらず運べるため、リンク数が稼ぎやすく、初心者にも優しい。とはいえ、都市化アクションがないため町の独占が起きやすく、上級者同士で戦うと熾烈な戦いが発生すること必須。

 

1890ベルリン

特徴:

セットアップ時に都市の色がランダムに決定される。各都市の一番右に置かれている貨物駒だけを輸送可能。線路敷設は2枚まで、技術士アクション選択時に3枚敷設可能。

 

感想:

コンパクトなベルリン!次に来る商品がマップ上に並べてあってわかりやすいと思いきや、一番右の商品しか運べない。実質できることの選択肢が超狭くて、線路が2枚上限な事もあり、機関車レベルを上げても高リンクを全く作れないという闇のマップ。技術士を強くした傾斜は評価したいが、人を選ぶマップ。

 

ポルトガル

ルール概要:

アクション選択直前に、線路タイルを1本だけ無料で敷設する。

 

感想:

線路タイルを1本だけ無料で敷設する」動きにより、(ハハーン、そっちに行きたいわけね…)と線路敷設計画が「アクション選択前に」狂う。線路1枚を敷設する「タイミング」をずらず、というルール変更のみで、ダイナミックな変化をルールに与えている。着眼点が素晴らしい、ジョンのミニマリズム万歳の拡張。

 

 

 

セット3

パシフィック電力

特徴:

特定都市から敷設開始、そこから全ての線路が必ず接続していなければならない。機関車トラックがなく、独自の電力トラックに置換。

 

特別アクション:

特急:同色都市を一度通過できる。

 

感想:

アメリカの西海岸の複数の州が舞台のマップ。ロサンゼルスから始めなければならないという制約があり、1、2ラウンド目はいつもより線路敷設が難しくなる。しかし「電力供給」という独自システムの採用により、機関車リンクが従来より簡単に上がるアッパー系マップだ。初見では「キューブと同じ色の都市を通過できる」特別アクションが強いかと思ったが、このマップは思った以上に山が多く、山にも敷設可能である技術士アクションがとても強い。マップのイラストがピンク色で可愛く、暗めのマップが多い蒸気の中では、ビジュアル的なインパクトも抜きん出ている。



スウェーデンリサイクリング

特徴:

紫キューブを除外。商品補充フェーズがなく、代わりに輸送後の商品がリサイクルされ輸送先都市で赤⇨黄→青→黒となる。輸送後の黒キューブは焼却場(WTE)に配置される。  

 

特別アクション:

WTEプラントオペレーター:WTEプラントスペースから黒商品を全て取り自分の前に置く(終了時各2点)

 

感想:

世界有数のリサイクル国であるヨーロッパのスウェーデンを舞台としたマップ。埋め立てられるゴミは全体の1%未満で、リサイクルされなかったゴミも廃棄物発電(WTE: waste-to-energy)プラントで焼却されてエネルギーに変換され、その量は年間200万トンに上るそう。このマップでは、商品補充がない代わりに、商品がその都市でリサイクルされ、最終的に黒くなりWTEプラントに送られる。リサイクルされた後の色は固定なので、輸送計画が立てやすく、見た目ほど難易度は高くない良いマップ。

 

大阪

特徴:

闇営業:黒キューブのない都市に輸送すると収入−1。

挨拶まわり:同じ色の商品がある都市を通過または到着すると、1商品につき1ドルを獲得。

 

特別アクション:

値切り(技術士の置換):線路3枚のうち1枚を半額(切り上げ)で敷設可能。
飛び込み営業:商品輸送前に、黒キューブを黒以外の任意の都市に追加可能。

 

感想:

日本の大阪を舞台にした、お笑いがテーマのマップ。生まれ育った土地に愛着があり、筆者が作成した。個人的に、アッパー系が好きで、収入が上がりやすいマップが好きである。しかし、ただ収入が上がりやすいだけでは面白くないので、「キューブが多いが収入を上げるのは難しい」という感想を持ってもらうべく、セットアップ時の商品数は多く調整した。しかし、黒キューブがないと収入が上がりにくいため、輸送で苦しくなるだろう。特別アクションをうまく駆使して遊んで欲しい。

 

なんと、私の作った大阪マップが公式に採用されました。

 


出版にまつわる話:

出版を打診された際に、蒸気の時代の拡張マップデザイナーとして、「日本人・女性初デザイナー」だと言われ面食らいました。いろいろな方のご協力を得て、無事キックスターター版拡張としてお知らせできることになりました。この形に落ち着いて、本当に嬉しいです。

 

なお、5人(!)でのプレイ動画がYouTubeにアップされています(私もチャット欄で参戦しています)。1ラウンド目の初期ビッドが6になっていたり、他人の線路だけを使って収入が誰も上がらない上級者ムーブがあったりと、大爆笑しました。英語がわかる方は是非視聴してみてください!

 

リンカーン葬儀車


特徴:

白キューブが付属。白キューブを霊柩車に届けると収入+1。ターン順は前ラウンドに選択したアクションにより決まる。アクション選択時に、アクション実行の有無に関わらずお金を払わなければならない。

 

感想:

未プレイのためプレイ写真なし。リンカーンの霊柩車がアメリカ各地方を巡礼した、史実に基づいたテーマのマップ。アクション実行自体にお金がかかるため、よりソリッドに自分の今すべきことを見極めなければいけないだろう。また、そのラウンドに行うアクション選択だけでなく、次のターン順にも効いてくるアクション部分がどう機能しているかが楽しみのマップである。

 

中国南部


特徴:

技術士と機関車アクションは使用不可。プレイヤーマーカーを4つしか使用できず、5つ目を完成させた場合、いずれかの自分のリンクを国有化する必要がある。その場合、線路タイル分のお金を獲得する。    

 

特別アクション:

援助:援助トークンを獲得。使用することで、4枚目の線路敷設か、機関車レベルを1高いレベルとみなす。使用しなかった場合、1個3点。 

 

感想:

巨大国家中国南部マップ。このマップのユニークな点は「4リンクまでしか私有線路を作れない」という点で、ユニークなだけでなくそれがかなりうまく機能している。20枚以上プレイヤーディスクがあるにもかかわらず、それを4枚しか使えないのだ。私有線路以外の場所は、国有化、すなわち誰も収入を得ない線路としてやりくりする必要があるため、どの線路が最も重要かの優先順位を考えなければならない。国有化線路からは香港に荷物を運べないなど、フレーバーとしても中国らしさが随所に光る良い拡張。

ディスコインフェルノ

特徴:

2株式15ドルで開始。連鎖反応として、輸送先都市から新たなキューブを輸送可能(機関車レベルの上限リンク数まで)。商品が1つもない都市は裏返しにされ、以後キューブの輸送元・先都市にできない。

 

感想:

Infernoは灼熱・地獄などの意味。どこが灼熱なのかというと、キューブがなくなった都市は燃えてなくなってしまうのだ。ディスコに人(キューブ)を送り込む、踊っているのか踊らされているのかわからないマップ。運び切りではなく、一度キューブを落とした都市からまた輸送を継続できるツイストがとてもユニークで、このマップの大きな個性となっている。使用予定の都市からキューブが奪われ、さらに燃えてなくなることもあり、その場に応じた適切な対応力が求められる上級者用マップ。

 

 

 

最後に

楽しそうなマップばかりで、発売が待ち遠しいですね。ルール概要を読んで気になった方は、キックスターターのページにドラフト版のルール(英語)も公開されているので、読んでみてください。

www.kickstarter.com

 

また、これらのマップ含む100マップを紹介した「蒸気の時代ファンブック」なんてのも作りました。現在再販予定で、以下Engamesさんのサイトから、入荷通知メールが受け取れます。このほかにもたくさんの拡張マップが存在しているので、気になった方はぜひチェックしてみてください。

 

 

100マップを遊んでもまだ熱は冷めず、まだまだ蒸気の時代生活は続きそうで、ワクワクしています。

 

ちなみに、拡張マップのオールタイムベスト10はここです。当時紹介したマップが今回のキック拡張に結構入っていて、とても嬉しいです。

 

hirobodo.hatenablog.com

 

 

ボドゲイムhiro (@bodogeimu) | Twitter

Twitterでは所属サークルのゲーム紹介の他、アメリカで日々遊んだゲームなどをあげています。最近は蒸気の時代に関するツイートが多いです。

よければFollowしてください。

それでは!